研究概要 |
カチオン、アニオン、ラジカル、カルベンなどの反応性中間体の基礎研究の成果が現在の化学反応論、有機合成化学、機能性材料の科学を支えているように、一重項ビラジカルに関する更なる研究は、学術的のみならず産業的にも極めて重要である。本研究では、以下の研究成果を得た. より長寿命の一重項ビラジカルを発生するために,一重項1,3-ビラジカルの4,5位に窒素元素を持つビラジカルを設計し,その寿命に及ぼす元素効果について研究した.その結果,炭素骨格を持つビラジカルの寿命は,約500ナノ秒程度であったが,窒素原子を持つビラジカルは,数ミリ秒の寿命を有することが明らかになった.さらには,これまで分子内反応の中間体としてのみ考えられてきた一重項ビラジカルを「分子間反応の中間体」として用いる新しい付加環化反応を開発することに成功した.具体的には,2位にケイ素原子を持つ1,2-ジアザ-4-シラ-3,5-ビラジカルは,系中に存在するPTADと反応し,付加環化を高収率で得た.構造はX線解析により確認し,ビラジカルの分子間反応の初めての例を見いだした.
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