研究課題
本研究では、新規に開発した1,8-ジメトキシチオキサンテン配位子を二つ有するアレン化合物を合成し、それをジメチル化することで超原子価6配位炭素化合物の合成に世界で初めて成功した。単結晶X線構造解析の結果、中心の炭素原子と周りの酸素原子間の距離は2.64-2.75オングストロームで、炭素と酸素のvan der Waals半径の和(3.25オングストローム)よりも短いことが分かった。精密電子密度解析および理論計算の結果、炭素原子と4つの酸素原子間すべてに電子密度が分布していることが分かり、その炭素-酸素間に吸引的な相互作用が存在していることが示された。硫黄原子上の置換基の効果について実験的に証明するために骨格にメトキシ基とフェノキシ基を二つずつ有するアレン化合物を新規に合成し、さらにジスルホキシド、ジスルホニウムへと誘導した。これらの化合物のX線構造解析の結果から、理論計算によって予想されたように、硫黄上の置換基の電子吸引性が強くなるにつれてその炭素と酸素原子間の吸引的な相互作用が強くなることが分かった。また、メトキシ基の酸素原子の電子供与性のほうがフェノキシ基の酸素原子のものよりも強いことを反映して、メトキシ基の酸素原子の方が中心炭素により近くなっていることが分かった。これらの結果から中心炭素と周りの4つの酸素原子の間に吸引的な相互作用が存在していることを示すことができ、本研究の第一の目的であった超原子価6配位炭素化合物の合成に成功した。
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