研究概要 |
平成19年度は、 (1)ジアリールメチレンシクロプロパン類(1)を初めとする種々の化合物の熱発光観測とその機構解明、に的を絞り、主に次の(A)〜(D)の研究を実施した. (A)メチレンシクロプロパン(1、ジフェニル体)の熱発光の機構解明 (A-1)分光学的評価 (A-2)重水素ラベルしたジフェニル体1(d_2-1)を用いての生成物解析 (A-3)エネルギーダイアグラムによる評価 (A-4)理論計算による評価 (B)種々のアリール基をもつ1の合成(目的の項参照),熱発光の観測,および置換基効果の検討 (C)励起ジフェニルエチルラジカル(4^<.*>)の発光の観測、置換基効果の検討 (D)データ解析、1の熱発光に関する総括 その結果、 (1)発光種が励起トリメチレンメタン(TMM)型励起ビラジカル(2^<..*>)であることを明らかにした. (2)γ線照射直後の低温マトリックスには、ラジカルカチオン(1^<.+>と2^<.+>)とラジカルアニオン(1^<.->と2^<.->)が発生していると考えられ、実際にTMM型ラジカルカチオン2^<.+>とTMM型ラジカルアニオン2^<.->が吸収スペクトルで観測された. (3)TMM型励起ビラジカル(2^<..*>)はラジカルカチオンとラジカルアニオンの逆電子移動(電荷再結合)で生成することを明らかにした. (4)TMM型励起ビラジカル(2^<..*>)を与えるラジカルカチオンとラジカルアニオンの組み合わせとしては、(1^<.+>と1^<.->)、(1^<.+>と2^<.->)、(2^<.+>と1^<.->)、(2^<.+>と2^<.->)の4組が形式上考えられるが、このうち(2^<.+>と2^<.->)は2^<..*>を与え得ないこと、その一方、(2^<.+>と1^<.->)が最も2^<..*>を与える可能性が高いことを明らかにした.
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