研究課題
フラストレート効果を有した化合物系や層状(二次元)化合物系、量子臨界点近傍の化合物系を対象に新たな遍歴電子物性を探索し、以下の結果が得られた。(1)水を層間に挟んだコバルト酸化物系の超伝導体NaxCoO2・yH20に関して、核磁気共鳴(NMR)、核四重極共鳴(NQR)測定によってスピンダイナミックスを詳細に調べ、三角格子面内は強磁性磁気相関で、面間が反強磁性磁気相関となっており、そのスピン揺らぎを媒介した超伝導体であることを実験的に明らかにした。さらにソフト化学の手法によって、系が超伝導II相→磁性相→超伝導I相と連続的に電子状態が変化するリエントラント現象を見いだしたが、その際に、超伝導I相、超伝導II相、磁性相のいずれにおいても、常に上述の磁気相関が同様に存在していることを明らかにした。また、超伝導相のCoの価数が通常言われているようにCo(IV)に近いのではなくCo(III)に近いことをX線共鳴吸収実験によって明らかにした。この結論は超伝導の発現機構を考えていく上でこれまでの考えを根本的に覆すもので、非常に重要であると考えている。(2)スピネル系超伝導体LiTi204系と重い電子系LiV204系の混晶系において超伝導状態からV置換によって反強磁性スピン相関が出現する過程を7LiNMRによって明らかにした。(3)層状化合物LaOCoAsにおいて生じる強磁性が量子臨界点近傍に現れる典型的な弱い遍歴電子強磁性であり、高温では三次元から二次元系へとクロスオーバーしていることをその磁化の振る舞いから明らかにした。以上のようにフラストレート系や低次元系の遍歴電子系化合物の新たな相転移現象や電子状態に関して研究成果をあげた。
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