研究概要 |
本研究では,CoO_2系やCrB_2系などの層状三角格子構造やパイロクロア構造・歪んだペロブスカイト構造を基本とした、3d・4d・5d遷移金属系元素であるコバルト、クロム(Co、Cr)、ルテニウム(Ru)、レニウム(Re)等の化合物系に注目し、新物質探索やその磁性サイトの置換系において、磁性と超伝導の関係を明らかにし、スピンの揺らぎを媒介とした新たな磁性機構によるスピン三重項超伝導や新たな遍歴電子磁性といった量子臨界点近傍の新たな遍歴電子量子相を開拓し創成・確立していくことを目的として研究を行った.その中で特に次の2つの研究において大きな成果を挙げることに成功した.二次元鉄正方格子系Fe_<1+d>Te_<1-x>Se_xの物性を巨視的な手段として磁化, 電気抵抗率、比熱の測定,微視的な手段として核磁気共鳴(NMR)による測定を行った.エンド物質であるFe_<1.14>Teでは61.5Kで反強磁性秩序をともなった構造相転移が見られた.Se置換量xの増加とともに反強磁性転移温度の低下がおこり、x=0.3以上では反強磁性相のごく近傍で超伝導が発現した.またスピンダイナミクスの観測から,超伝導の発現に反強磁性揺らぎが深く関与し,超伝導ギャップにノードのあるスピン一重項超伝導体であることを明らかにした.また,二次元コバルト正方格子系LaCoAsOにおいて磁気的性質をスピン揺らぎの観点から詳細に研究した結果,LaCoAsOがこれまでに例のない擬二次元的なスピン揺らぎが支配的な遍歴電子強磁性体であることを明らかにした.またLaCoAsOの周辺物質において新奇物性の探索を行ったところ,LaをCe-Gdへと置換していくことにより磁気的性質が大きく変化することがわかった.特にNd-Gdにおいては,強磁性転移温度よりも低温において強磁性-反強磁性相転移が観測された.この強磁性-反強磁性相転移近傍では強磁性体と反強磁性体の積層人口薄膜において見られるような大きな磁気抵抗率が観測されており,実用研究としても今後の発展が期待できる.
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