研究概要 |
1.本研究は、糖鎖を連結させた先端医療用金属錯体の合成とそのバイオメカニズムの解明を目指すものである。本年度はClick Chemistryを利用した糖連結配位子{4-(2-pyridyl)-1,2,3-triazole(=pyta)}骨格を配位部位とする新規糖連結配位子の合成およびその発光性糖連結Re(I)錯体への展開を行った。 2.アジド化合物{benzyl azideとグルコースを連結した化合物2-azidoethyl 2,3,4,6-tetra-O-acetyl-β-D-glucopyranoside}とアセチレン化合物(2-ethynylpyridine)をTHF-H_2O混合溶媒に溶かし、これに1M sodiumascorbate、CuSO4を加えて、50℃で撹拌することによりpytaおよびD-Glc連結pytaを合成した。得られた配位子と[ReCl(CO)_5]をメタノール中で加熱撹拌することによりRe(I)錯体を合成し、それらのキャラクタリゼーションを行った。 3.X線結晶構造解析から[ReCl(CO)_3(Bn-pyta)]はbpyと同様の配位構造をとることが判明した。一方、EXAFS測定から[ReCl(CO)_3(AcGlc-pyta)]および[ReCl(CO)_3(Glc-pyta)]のReイオン周りの構造は(Bn-pyta)錯体とほぼ同じであることを確認した。[ReCl(CO)_3(bpy)]の発光寿命は3.17μsであったのに対し、[ReCl(CO)_3(Bn-pyta)]では8.90μsと長寿命化した。この寿命は4,4'-diamino-2,2'-bipyridineを配位子としたRe(I)錯体に匹敵することから、pyta配位子は極めてp電子過剰な配位子として作用することが明らかとなった。 以上、本研究結果は医療用金属錯体の開発にとって重要な知見を与えるものとみなされる。
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