研究分担者 |
小幡 誠 山梨大学, 医学工学総合研究部, 助教 (70343267)
森本 恵子 奈良女子大学, 生活環境学境, 教授 (30220081)
大井 博己 京都大学, 産官学連携センター, 寄附研究部門助教 (80452522)
粳間 由幸 米子工業高等専門学校, 物質工学科, 助教 (70442457)
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研究概要 |
1.本研究は、当研究室で世界に先駆けて切り開いてきた糖質の配位化学を基盤にして、糖鎖を連結させた先端医療用金属錯体および核画像診断薬の合成とそのバイオメカニズムの解明を目指すものである。さて、光医療の最先端である光線力学療法(Photodynamic Therapy : PDT)は患者の機能温存、すなわちQuality of Life(QOL)の高いクリーンな治療法として注目を集めている。本年度はこのような観点から、生理機能性分子として糖鎖に着目し、糖鎖を付与した新規光増感剤(糖鎖連結ポルフィリン、クロリン誘導体)の合成、および子宮頸部がんの培養細胞(HeLa細胞)に対する光毒性(PDT効果)を検討した。 2.5,10,15,20-tetrakis(pentafluorophenyl)-porphyrin(H_2TFPP)はβ-pyrrole位への1,3-双極子付加反応およびペンタフルオロフェニル(Ph^F)基のパラ位がチオラートアニオンによる求核置換反応を受け易いことが知られている。本研究ではチオラートアニオン源としてS-グリコシド配糖体を用いることで、この特異的な反応を糖連結光増感剤合成へ適用した。さらに、1,3-双極子付加反応を利用してD-グルコース(D-Glc)およびD-ガラクトース(D-Ga1)がS-グリコシド結合で連結した新規糖連結フッ素クロリン{(H_2TFPP-SGlc、H_2TFPP-SGal)}を合成した。次いで、これらを光増感剤として用いてHeLa細胞に対するPDT試験を行った。 3.H_2TFPPの特異的な反応を利用することでHeLa細胞に対して極めて高い光毒性を有する新規糖連結光増感剤の開発に成功した。本研究結果は、糖質を連結させた医療用ハイブリッド体の開発にとって重要な知見を与えるものとみなされる。
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