軟X線偏光顕微鏡実現のために放射光マイクロビームの実現と、顕微分析装置本体の開発に取り組んだ。ポリキャピラリーレンズを放射光と組み合わせた例はこれまでに実績がほとんどなく、製造メーカ(XOS社)の設計ソフトでは最適なパラメータを決定できないことが明らかになった。従って十分なデータの蓄積を有する微小X線源とポリキャピラリーレンズの組み合わせを本年度の予算で購入した。この装置に試料の走査系や蛍光X線検出系を組み合わせてプロトタイプの顕微分析装置を作成し、軟X線を含む様々なX線エネルギーに対するビームサイズ、ビーム強度などの評価を行った。また、蛍光X線分析における検出限界の最適化にも取り組んだ。最終的なパラメータを決定し、軟X線放射光集光用のポリキャピラリーレンズを開発した。 装置開発と平行して、炭酸カルシウム薄膜の多形制御について溶液化学的な検討を進めた。過飽和溶液において炭酸カルシウムの結晶成長が始まる際には、固液の平衡から溶解度積で決まるpHが保持される機構が明らかになった。アラゴナイト相とバテライト相では溶解度積が大きく異なるため、急速な過飽和条件によりバテライト相が生成する場合には成長溶液のpHが通常よりは高いことが確認された。成長時にpHをモニターすることで、成長した結晶をX線回折法または放射光XAFS法で評価を行うことなく多形を確認することができた。この手法を用いて様々な成長条件から最適な条件を決定することができた。
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