研究概要 |
軟X線偏光顕微鏡実現のために放射光集光用ポリキャピラリーレンズの設計、開発を行い、並行して作成を進めた顕微分析装置本体に組み込んだ。放射光用のポリキャピラリーレンズについては製造メーカにも充分な実績がないことから、通常X線源とポリキャピラリーレンズ(カタログ品)を組み合わせたプロトタイプの顕微分析装置(昨年度作成)を用いて様々なX線エネルギーに対する集光特性の評価を行い、最終的なパラメーターを決定した。利用する軟X線(2-5keV)に対しては空気による減衰も大きな影響を与えるため、ポリキャピラリーレンズの両端を薄いベリリウム膜で封じ、内部を排気できる構造を採用した。さらに、入射ビーム強度の測定や試料からの放出電子測定への利用を想定し、ポリキャピラリー先端部のベリリウム窓をポリキャピラリーレンズ本体とは絶縁し、電極として利用できる構造を採用した。完成したポリキャピラリーレンズのパラメーターに合わせて、軟X線用顕微分析装置本体についても、ポリキャピラリー接続用ベローズ、調整機構や試料の走査ステージなどを決定し、装置を完成させた。 軟X線用顕微分析装置の作成と並行して、プロトタイプの顕微分析装置を用いて異常真珠試料についてCa,Sr,Brなどの顕微蛍光X線分析を行った。真珠は通常光沢を持つアラゴナイト相の薄膜で覆われているが、異常真珠ではカルサイト相が成長してしまい、その発生起源は良くわかっていない。装置の空間分解能を利用して真珠層と異常層の境界について微量元素イメージングを行い、境界領域では通常検出されないBrが数100ppm程度存在している事実を見出した。
|