研究概要 |
当該年度も,液液界面のin situ深さ方向分析法を確立するために,いくつかの予備的な実験を継続して行った。すなわち,(1)液液界面における金コロイドの生成条件の確立,(2)近接場開口光ファイバープローブ用薄層二相マイクロセルの作製,である。 1.水相に塩化金(III)酸水溶液,有機相に還元剤としてdl-α-トコフェロールを加え,液液界面における反応の様子を,in situ顕微分光法により測定した。その結果,界面にのみ特異的に金コロイドが生成して会合し,ミクロな金属樹を形成することを確認した。さらにその会合を制御するために,種々の配位性の化合物を添加したところ,ある物質の場合にのみ会合が抑制され,個々の金コロイドの微粒子を液液界面に存在させることに成功した。これらは極めて小さいため,通常の透過光測定では確認できなかった。そのため,全内部反射レーザー散乱法を用いることによって確認した。それぞれの大きさは,数〜数十nmであると考えられる。 2.従来の薄層二相マイクロセルでは,近接場開口光ファイバープローブには適さないため,それに適した薄層二相マイクロセルの作製を行っている。試作品として,厚さ0.14mmのカバーガラスに直径300μmの穴(a)をあけ,厚さ1mmのスライドガラスに直径1mmの穴(b)をあけ,穴なしのカバーガラス,穴有りのカバーガラス,穴有りのスライドガラスをこの順に接着した。(a),(b)の穴は,それぞれ水相用,有機相用のくぼみであるが,この薄層二相マイクロセル内に,有機相と水相の溶媒を加えて,極微な液液界面を作成することに成功した。さらに,ナノメートルの空間分解能を有するピエゾ素子を保持するための独自の部品を設計して作製中である。この液液界面とピエゾ素子を用いて,界面に光ファイバープローブを上から接近させる予定である。
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