研究概要 |
当該年度も,液液界面のin situ深さ方向分析法を確立するために,いくつかの実験を継続して行った。すなわち,(1)液液界面への金コロイドの吸着と液液界面における金コロイドの会合の測定,(2)液液界面近傍における並進拡散係数の推算,である。 1. 大きさが5~40nmの金コロイドをサンプルとして用い,ドデカン/水界面に吸着するかどうかを確認した。これらの金コロイドの大きさは,光学顕微鏡の回折限界を超えているため,直接測定が難しい。そのため,暗視野顕微法もしくは全内部反射レーザー散乱顕微法を用いて測定を行った。その結果,本来両親媒性を有しない金コロイドであっても,ドデカン/水界面に吸着することが明らかとなった。また,それらのドデカン/水界面における並進拡散係数の見積もりから,それらは時間とともに界面で会合し,大きくなっていることがわかった。 2. 全内部反射励起蛍光法は,界面近傍に存在する物質を選択的に測定することができる有力な測定法である。また,光退色後蛍光回復法は,蛍光物質の並進拡散係数を求めることができる手法である。液液界面近傍に存在する蛍光物質サフラニンOの並進拡散係数を,全内部反射-光退色後蛍光回復法によって測定した。その結果,並進拡散係数として,ほぼ妥当な値が得られた。また,その拡散係数は,有機相の溶媒の粘性率にはほとんど影響を受けなかったが,界面活性物質や水相の溶媒の粘性率には影響された。全内部反射光の入射角を変えると,侵入深さが変わるので,現在は,その深さを変えることによって並進拡散係数が影響を受けるかどうかを検討中である。
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