研究概要 |
光学活性ビナフトール、三塩化リンおよび粉末セレンから調製されるセレノリン酸クロリド(BISEPCl)を新しいキラル分子ツールとして利用することを検討した。まずBISEPCIに対して、水、Et_3Nを加え、光学活性セレノリン酸アンモニウム塩を調製した。それに対してハロゲン化アルキルを加え、セレノリン酸Se-エステルをジアステレオマー混合物として得た。この混合物を液体クロマトグラフで分離することで、単一のジアステレオマーを得た。これに対してBu_4NF/THF溶液を反応させると、選択的P-Se結合切断が進行し、その後空気酸化を経て、光学活性ジセレニドを高収率で合成することに成功した。 またBISEPC1とラセミ体であるキラルニ級アルコールとの反応から、様々な置換基を有するセレノリン酸0-エステルを、ジアステレオマー混合物として導いた。およそ15種類の誘導体のジアステレオマー間の31P, 77Se, 13Cおよび1H NMRの化学シフトの相対的差を一覧表として、これらのスペクトルから、絶対構造未知の誘導体のそれを類推する手法を開拓した。すなわち、1-アリール-2-プロパノール由来のジアステレオマーでは、R, R体に相当する77Se NMRは低磁場側に観測され、一方31P NMRは、高磁場側に観測された。同様に1H, 13C NMRでもキラル炭素やそれに隣接する炭素上のプロトンは、一定の高磁場、低磁場シフトが観測された。その結果をもとに1-(4-フルオロ)フェニル-2-プロパノールの絶対配置を決定した。
|