研究概要 |
レニウム錯体は有機合成反応にどれだけ利用できるのかを明らかにすることを目的に研究を進めた。 第一のテーマは新規レニウム錯体の調製であり、グローブボックスを利用して種々検討した。第二のテーマは「レニウムの新しい触媒作用の開拓と合成反応への利用」である。本研究により下記の反応を見いだした。 (1) レニウム触媒Re_2(CO)_10を用いると、芳香族C-H結合だけでなく、オレフィン性C-H結合も活性化できることを見いだし、その一般性と適用限界を検討した。 (2) レニウム錯体Re_2(CO)_10を触媒として用いると、従来は難しかったフェノールの位置選択的なモノアルキル化反応が、末端アルケンと加熱することによりおこなえることを見いだした。一置換末端アルケンではオルト選択的に、また1,1-二置換アルケンや1,3-ジエンではパラ選択的に反応が進行した。 (3) レニウム触媒[ReBr(CO)_3(thf)]_2とテトラブチルフッ化アンモニウム(TBAF)を同時に用いると、フェニルアセチレン類が位置選択的に二量化し、(E)-1,4-二置換エンインが選択的に生成することを見いだした。 (4) レニウム触媒[RcBr(CO)_3(thf)]_2存在下、鎖状のβ-エナミノエステルと末端アレンを反応させたところ、β-ケトエステルとの反応の場合とは異なり、末端アレンへの位置選択的な付加反応が進行することを見いだした。 (5) インジウム触媒を用いる逆Claisen縮合反応を見いだしていたが、この反応の一般性と適用限界を検討した。
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