研究概要 |
高分子に収着した水分子のスピン共鳴を原子間力顕微鏡(AFM)で捉えることを目的として、磁場変調装置を組み合わせ、実験を行った。外部磁場を一定に保ち、交流磁界を掃引することで原子間力顕微鏡によるスピン共鳴の検出を試みた。この結果、目的とするスピン共鳴の検出には至らなかったが、ロックインアンプで低周波数領域において共鳴ピークを検出し、磁化反転作用を捉えることに成功した。このことから、スピン共鳴を検出する回路は組みあがっていると考えられる。今後、さらに磁場条件を整えることで、目的とするスピン共鳴の検出が可能であると考えられる。これに加えて、赤外分光法を、優れた血液適合性が見いだされているPoly (2-methoxyethylacrylate) (PMEA)薄膜に適用した。同膜に水を収着させ、140 Kまで冷却、昇温させながら、水の赤外吸収スペクトルを測定した。冷却速度が0.25 K・min^<-1>と遅い場合には,冷却過程でも結晶化が確認された. この結晶化は明確な液化を経ずに蒸着様の過程により進行した. さらに, 昇温過程でも同様に蒸着様の過程による再結晶化が確認された. このように, PMEA中の水の結晶化および再結晶化はいずれも蒸着過程によりなされており, 再結晶化現象は冷却によって, ある温度以下で拡散できなくなった水が昇温により再び拡散可能になることで生じると考えられる. 低温再結晶化が材料の血液適合性に必須の要件であるとの従来の解釈に一石を投じる発見であった。
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