研究概要 |
海外協同研究者のWinnik研において種々の末端基(疎水性,親水性)を有する分子量の制御された新規感熱性高分子ポリイソプロピルアクリルアミド(PNIPAM),ならびに環状PNIPAMが合成され,水溶液(濃度c=0.5 gL-1)のDSCによる吸熱曲線(脱水和のエンタルピー測定)ならびに曇点曲線の分子量依存性が測定された.これらの結果を「会合高分子溶液理論」により解析し,末端基が水和に及ぼす効果,環状トポロジーの効果を分子論的に解明した. PNIPAM水溶液にメタノールを混合すると,メタノールは良溶媒であるにも拘わらず鎖の収縮や相分離の誘起などの貧溶媒性を示す.良溶媒を2種混合すると貧溶媒になる現象は共貧溶媒性(cononsolvency)とよばれる.この奇妙な振る舞いは,水分子とメタノール分子の高分子鎖への競争的水素結合吸着が原因であり,競合が最も激しくなる溶媒組成で吸着量(水素結合数)が最小になるために起こることを,理論モデルと実験との比較により示した. テレケリック会合高分子のネットワークに誘起した剪断開始流の初期過程における応力の各成分(剪断応力,第1,第2法線応力)の時間変化を「非アフィン組替え網目理論」をもとに時間について素朴な巾展開を行い,各項の係数を求めることにより解析した.非線型鎖の場合には応力がオーバーシュートする前に急激な増大(歪み硬化)が観測される.硬化が起こる条件を高分子鎖の張力-伸長曲線の非線型性と関連づけ,分子パラメータで表すことができた.オーバーシュートのピークは総変形量が一定値に達した時点で生じるというのが定説になっているが,ブリッジ鎖の伸長特性により異なる振る舞いをする可能性がある.また,非線型性の増大とともに第2法線応力の符号が反転することを発見した.
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