研究概要 |
我々は、天然コラーゲンの繊維構造解析と、モデルペプチド単結晶の高分解能解析の結果から、コラーゲンの分子構造はRich & Crickモデルではなく、我々が提案している7/2-helixであることを発表した。本研究では、これらの実績を基にして、コラーゲン三重らせん構造の安定化機構を構造の立場から解明する。以下、本年度の研究成果を記す。 1. PPG4-Hyp-Yaa-Gly-PPG4(Yaa=Hyp, Pro, Asp, Asn, Thr, Val, Ser)の高分解能解析を終了し、YaaがProでなければHyp(X)はup-puckering、Proの時だけdown-puckering構造をとることが明らかになった。プロリン環のpuckeringは隣接鎖間のstacking相互作用や、水酸基の向きを変えることから双極子相互作用にも影響しているので、コラーゲンらせんの安定化を考える上での重要な構造情報となった。 2. (Hyp-Pro-Gly)_<10>がtriple-helix構造をとらないことから、30年以上にわたってX位のHypは構造を不安定化させると思われてきた。ころが近年、Hyp-Hyp-GlyとHyp-Thr-Gly配列では、らせん構造を取り得ることが明らかになった。上記ペプチドのうち、Yaa=Hyp, Thr, Val,Serの構造を詳細に検討することにより、分子内における隣接鎖間のHyp (X) : Yaaのスタッキングペヤー間におけるvan der Waals接触面積の大小と双極子相互作用の有無により、ラセン構造の安定性を統一的に説明することに成功した。
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