研究課題/領域番号 |
19350067
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
田村 類 京都大学, 大学院・人間・環境学研究科, 教授 (60207256)
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研究分担者 |
津江 広人 京都大学, 大学院・人間・環境学研究科, 准教授 (30271711)
高橋 弘樹 京都大学, 大学院・人間・環境学研究科, 助教 (00321779)
酒井 尚子 京都大学, 大学院・人間・環境学研究科, 技術職員 (70447944)
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キーワード | ラジカル液晶 / 強磁性的液晶 / キラル液晶 / 強誘電性液晶 / 常磁性液晶 / 磁気電気効果 / 磁場配向 / 光学活性液晶 |
研究概要 |
これまでに合成した液晶性を示すキラル有機ラジカル化合物のラセミ体と光学活性体について、それぞれの相構造と液晶相発現温度について総括し、アルキル側鎖長の影響について定量的に評価した。ついで、キラルスメクチックC相を示す化合物については、配向処理を施した電極付きサンドイッチ形ガラスセル(セル厚:4μm)に封入した試料を作成し、自発分極・電場応答性・チルト角などの強誘電性発現の確認に必要な各種測定を行い、強誘電性と分子構造の相関関係を明らかにした。 ついで、これらの液晶性化合物について、SQUID磁束計を用いて、磁化率の温度依存性を測定したところ、昇温過程で、結晶相から液晶相へ転移する際に、磁化率の異常な増加を確認した。この磁化率の増加は、ネマチック相では小さいが、キラルネマチックス相では大きくなることが判明した。さらに、スメクチック相やキラルスメクチック相でも大きな増加が認められた。また、いずれの場合も、液晶相を維持している間は、上昇した磁化率の値に変化は見られなかった。この事実は、有機ラジカル化合物が液晶相において強磁性的な相互作用を発現し、その相互作用の大きさは液晶相の超構造に依存することを物語っている。そこで、これらの液晶物質を温水上に浮かべて粒子とし、永久磁石を作用させたところ、磁石の動きに応じて、自由に水面上を動いた。この際、ネマチック相を示す液晶の動きは遅かったが、キラルネマチックス相・スメクチック相・キラルスメクチック相を示す液晶の動きは速く、磁化率の温度依存性の結果と一致した。 さらに、電子スピン共鳴スペクトル法を用いて、これらの液晶性ラジカル化合物について、スペクトルのg値・線幅(ΔHpp)・強度(I)から得られる常磁性磁化率について、温度依存性を測定したところ、やはり結晶相から液晶相へ転移する際に、常磁性磁化率の異常な増加がみられ、強磁性的相互作用の発現を再確認できた。 以上のように、本研究により、種々の有機ラジカル液晶相中で強磁性的相互作用が発現することが明らかとなった。
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