研究課題/領域番号 |
19350068
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
今堀 博 京都大学, 物質一細胞統合システム拠点, 教授 (90243261)
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研究分担者 |
梅山 有和 京都大学, 工学研究科, 助教 (30378806)
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キーワード | 色素増感太陽電池 / バルクヘテロ接合太陽電池 / 電子移動 / ポルフィリン / フラーレン / 泳動電着 / 疎液相互作用 / パイーパイ相互作用 |
研究概要 |
我々は色素増感型とバルクヘテロ接合型の両特性を有する新規有機太陽電池の開発に成功している。特にポルフィリンとフラーレンを用いた場合、ポルフィリンとフラーレンのπ-π相互作用による錯形成、混合溶媒中での疎液性相互作用による複合クラスター形成、泳動電着法による複合クラスターの酸化物半導体電極上への集積化を逐次的に利用することで、高い光電流発生効率を達成することができる。これまで、ドナー・アクセプターの組織化に関して、デンドリマー骨格、ナノ微粒子などを土台としてポルフィリンを予め配列させておき、フラーレンと共に集積・薄膜化することで光電変換効率が向上するという知見を得てきた。しかし、これら化合物の合成は、一般的に難しく、実用化を考慮すると、より簡便な方法で分子の組織化を制御できることが望ましい。我々は、メソテトラフェニルポルフィリンのフェニル基上の置換基効果を系統的に検討することで、ポルフィリン・フラーレン複合クラスター内での分子配列を制御し、複合クラスターを泳動電着させた電極の光電変換効率を向上できることを見出した。種々の分光分析や表面分析を使い、酸化スズ電極上ポルフィリン・フラーレン複合膜中の分子配列構造を検討したところ、共単結晶内の分子配列が含まれることがわかった。共単結晶のX線構造解析では、ポルフィリンとフラーレンは交互に層状構造を形成している。従って、超高速の電荷分離が生じた後、ホールと電子は、それぞれ、ポルフィリンが形成するホール輸送ナノ経路、フラーレンが形成する電子輸送ナノ経路を通って運ばれることで、高い光電変換特性が発現していると考えられる。このような電子輸送ナノ経路の構築がバルクヘテロ接合太陽電池の高効率化に重要であることが今までに提案されていたが、今回の結果は、その有用性を分子レベルで実験的に示した初めての例である。
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