研究課題
電荷秩序状態をもつ物質においては様々な空間・時間スケールをもつ不均一な電子状態の存在が示唆されている。この基盤研究では空間的に不均一な状態を可視化し、時間的に不均一な状態のダイナミクスを明らかにすることを目的としている。平成19年度は以下の研究を行った。(1)(npBifc)(TCNQ)_3における価数変化相転移:この物質は相転移転近傍の温度で60Kにも及ぶ幅広い転移幅を持つ。この幅広い相転移は従来知られているスピンクロスーバー相転移やリラクサーとは異なり、高温相と低温相の巨視的な分域が共存している相転移であることをX線回折と顕微ラマン分光法で明らかにした。この物質は相転移に伴って3%もの大きな体積変化をしめす。この体積収縮に伴う結晶内歪が原因となって巨視的な分域が共存する不均一な状態を安定化させているという現象論的な摸型を提唱した。(2)β-(meso-DMBEDT-TTF)_2PF_6の相図:この物質の金属絶縁体転移は静水圧によって抑制され、超伝導転移を示すことが知られている。赤外・ラマン分光法を用いて、この物質の絶縁相が長距離秩序をもつ電荷秩序相と短距離秩序をもつ電荷均一相があることを明らかにした。高圧力下でラマン分光を行って、湿度圧力相図を作成した結果、長距離秩序をもつ電荷秩序相は超伝導相に直接接してはいないことを明らかにした。また、高圧力下では、上記の2種類の電子相が共存する不均一な状態の温度・圧力領域が大輻に広がっていることを見出した。圧カセル内の圧力むらを精査した結果、圧力むらによるものではない。圧力によって生じた結晶内歪により、不均一な電子状態が安定化されたのであろうと推測している。
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