研究課題
平成20年度は遠赤外領域の反射率を測定する装置の立ち上げを完了した。電荷秩序状態をもつ物質について、従来の赤外・ラマン分光法に加えて以下のような研究を行った。(1)バンド幅の狭いα'-(ET)_2IBr_2の赤外・ラマンスペクトル、遠赤外-近赤外領域の光学伝導度、電気抵抗、静磁化率の測定を行って、この物質の200Kにおける相転移が電荷秩序状態から電荷無秩序状態への秩序無秩序型の相転移であることを明らかにした。特に高温相の電子状態が、金属ではなく電荷が一分子に局在しながら拡散的に移動している局在性の強い伝導性の電子状態であることを示した有機物では最初の例であると考える。この物質に静水圧を撫えると1.4GPa以上の圧力で金属化し、モット絶縁体系、あるいは密度波系へと移り変わることをラマン分光法により明らかにした。(2)非線形分光法を用いて、α-(ET)_2I_3における強誘電相の発見に続いて、α-(ET)_2I_2Brとα-(ET)_2IBr_2において新たな強誘電相を見出した。特に後者の物質においては空間的に不均一な強誘電相という新しい発見があった。発現機構は次年度の課題である。(3)β型のBDA-TTP塩は超伝導転移を示す物質がいくつか報告されている。BDA-TTP^0およびBDA-TTP^+の基準振動計算をおこない、また典型的な物質の赤外・ラマンスペクトルを灘定して、C=C結合と分子のもつ電荷との関係を明らかにした。そして、高圧力下で超伝導転移するβ-(BDA-TTP)_2I_3の常圧下の絶縁相が当初予想されていた電荷秩序状態ではなく、ダイマーモット状態であることを明らかにした。
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