研究概要 |
我々が見つけた細孔を有するカルボン酸金属錯体は、大きなポロシティと非常に均一な細孔を持っていることが特徴であり、気体を多量に吸蔵し、分子ふるいとしても有用である。また触媒中心としての金属イオンが空間に配列されており、高い触媒活性を示す。 平成19年度は種々のテレフタル酸(p-BDC)金属錯体のDABCO付加物([M_2(p-BDC)_2(DABCO)]_n)を合成し、これらの化合物がクリーンエネルギーである水素ガス貯蔵に有用であることを明らかにした。 平成20年度はトランスー1,4-シクロヘキサンジカルボン酸(CHDC)金属錯体のDABCO付加物[Co_2(CHDC)_2(DABCO)]_n、[Cu_2(CHDC)_2(DABCO)]_n、[Zn_2(CHDC)_2(DABCO)]_n、を合成し、水素吸蔵研究を行った。p-BDC錯体では、金属の違いによって水素吸蔵能に差が見られたのに対し、CHDC錯体では金属による差は殆ど見られなかった。これは、水素分子が金属と相互作用しにくい空間配置構造をしていることにあると思われる。 本年度はさらにp-BDCのルテニウム錯体を光触媒として水を分解して水素を製造する研究を行った。[Ru_2^<II,II>(p-BDC)_2(DABCO)]_n(1)、[Ru_2<II,III>(p-BDC)_2BF_4]_n(2)、[Ru_2^<11,III>(OAc)_4BF_4]n(3)、anatase-TiO_2(4)を用いて、400nm以上の光を照射、水の分解による水素発生の触媒活性を測定した。その結果、活性は1>2>3>4の順であることがわかり、最も高活性の1はanatase-TiO2の14倍以上もの水素発生量を示した。また、細孔を有する1、2が細孔のない3よりも高活性であることがわかった。 そして、細孔を有する配位高分子錯体が太陽光を利用してクリーンエネルギーである水素ガスの製造に有望な材料であることが明らかとなった。
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