銅イオンのホメオスタシスに関与するマルチ銅オキシダーゼCueOからアミノ酸を50残基除去した改変体を作成してそのキャラクタリゼーションとX線結晶構造解析を行った。X線結晶構造解析によってタンパク分子の土台構造が維持できていることが確認されたことから、初めてマルチ銅オキシダーゼの大規模なプロテインエンジニアリングが行われたことになる。この改変体Δα5-7Cue0は4つの触媒銅部位の銅イオンとその構造および機能を完全に保持していた。また、全ての銅イオンは組換え体と同じ分光学的および磁気的性質を示した。しかしながら大規模なプロテインエンジニアリングを行ったことによって基質特異性は劇的に変化し、Cu(I)に対する反応性は低下し、一方、元来極めて低い有機基質に対する酸化活性が高まったことから、Cuprous Oxidaseがラッカーゼに改変できたことになる。さらに、Δα5-7Cue0は電気化学測定が容易になっており、これは電極とタイプI銅の距離が短縮された効果であると考えられ、生物燃料電池のカソード触媒としての用途が開けて来たことを意味するものである。一方、タイプ1銅への配位子であるメチオニンへの変異導入によって酸化還元電位を上下することに成功し、この成果もまた、酵素機能の改変や、生物燃料電池への応用につながるものである。同じくタイプ1銅への配位子であるシステインへの変異によって酸素還元中間体を捕捉に成功した。この中問体のキャラクタリゼーションを新規に導入した極低温でのESR測定システムによって行い構造情報を得ることができた。さらに、組換え体の反応によってもうひとつの酸素還元中間体の捕捉とキャラクタリゼーションも行った。現在、これらの予備データのポリッシュアップに勤めているところである。
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