研究概要 |
酸化還元電位を人工的に調整し、酵素活性を増大させることを目ざして、ビリルビンオキシダーゼのタイプI銅への軸配位子であるMet467を非配位性アミノ酸に置換したところ、タイプI銅近傍に存在する非配位性アミノ酸Asn459が配位することを見いだした。これはマルチ銅オキシダーゼの中でもビリルビンオキシダーゼに特異的な現象であるが、このような保障的なアミノ酸の配位現象は始めての発見である。CueOにおいても同様に軸配位子Met510をGln、Ala、Thr、Gln、Leuに置換したところ、Ala、Thrへの置換では空いた空間への水分子の配位が示唆された。一方、Glnへの配位では期待通りフィトシアニン様タイプI銅部位が実現でき、酸化還元電位も負電位方向ヘシフトした。他方、Leuへの置換では、菌類ラッカーゼと同様のスペクトルを与え、正電位方向への酸化還元電位のシフトが実現できた。また、酵素活性も野生型酵素に比べて約5倍上昇させることができた。この結果は、マルチ銅オキシダーゼのタイプI銅の酸化還元電位の調整が調整でき、その結果、酵素活性が調整できることを示している。また、タイプI銅に配位したHisに水素結合したAsp残基に変異導入して水素結合を切断することによって酸化電位を正電位へシフトさせた。この結果は、電気触媒としてのマルチ銅オキシダーゼの可能性を広げた。以上の研究とは別に、CueOのタイプI銅配位子Cys500をSerに置換したところタイプI銅部位が空位となり、この変異体の反応によって酸素の4電子還元中間体が捕捉することができた。また、タイプII,III銅部位に水素結合したアミノ酸への変異導入とCys500への変異導入を組み合わせることにより、2種の酸素還元中間体を室温において、安定的に捕捉することができるようになり、それらのキャラクタリゼーションも行った。
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