研究概要 |
植物の光形態形成を制御している光受容色素蛋白質フィトクロムの構造と機能を解明するために,開環状テトラピロール骨格を有するビリン系発色団の一般合成法を開発し,これまでに多くの新知見を得た。例えば,CD環部分の立体化学を固定したビリベルジン(BV)型発色団を合成しバクテリオフィトクロムAgp1及びAgp2のアポ蛋白質と再構成させて得られる人工フィトクロムの分光学的並びに生物化学的な解析を行い,生理学的に不活性で赤色光吸収型のフィトクロム(Pr)における発色団15位の立体化学はZ-antiであり,生理学的に活性で遠赤色光吸収型のPfrではE-antiであることを世界で初めて直接的に解明した。さらに平成20年度における本研究では,AB環部分の立体化学を固定した発色団やAB環及びCD環の立体化学を共に固定した発色団を新たに合成し,Prは5Z-synであり,Pfr型はAgp1では5Z-anti,Agp2では5E-antiであることを明らかにした。このように有機合成化学を基盤とするフィトクロム研究は極めて有効であり,必須の研究手法であることを示すことができた。しかしまだ,植物フィトクロム発色団の立体化学は不明である。そこで現在,AB環及びCD環の立体化学を固定したフィコシアノビリン(PCB)誘導体を合成している。さらに平成20年度における飛躍を目指して,アポフィトクリムの簡便な単離・生成法の確立を目指して,アフィニティークロマトグラフィーの実現に向けた予備的実験を行い,樹脂へのビリン系発色団の固定に成功した。
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