研究概要 |
新規な有機半導体を開発し、高性能の有機トランジスタの開発に成功した。例えば、ジフルオロフェニル基を置換したペンタセン誘導体は大気安定性にすぐれ、FETではambipolarの特性を示した。ペンタセンジオンの誘導体では嵩高い置換基の導入でキノイド構造の安定化を図り,n型特性を実現した。一方,ナフトチオフェンの2量体であるビナフトチオフェンを新規に合成し、ヘリングボーン型の結晶構造を取ることを明らかにした。この物質はHOMO-LUMOギャップが大きいために大気安定性に優れており、大気中でのホール移動度は0.67cm^2/Vsであった。平面構造が期待されるヘテロ環をトリフルオロメチルフェニル基で置換したヘテロ環コーオリゴマーを半導体として、高移動度のn型FETを開発した。チアゾロチアゾール誘導体を用いたn型FET素子においては、極性の少ないポリマー薄膜と高誘電率の絶縁膜(Ta_2O_5)を積層させたゲート構造を用いることで、低電圧で高性能のトランジスタを実現した。また、ベンゾビスチアジアゾール骨格は高い電子受容性を有しており,この骨格を有する化合物が高い電子移動度0.77cm^2/Vsを示すことを見つけた。この化合物を用いたFETの大気安定性は非常に高く,50日以上、大気下で駆動できた。薄膜をTEMおよびAFM観測し、高い結晶性とその連続性が高性能の理由であることを明らかにした。さらに、新規な半導体としてボロンを含むヘテロ環のπ共役系を開発し、高性能のトランジスタ特性を得ることができた。ジアザボロール環は、電子供与体として働き、この骨格を有するヘテロ環オリゴマーはp型特性を示した。しかし、キノン構造を導入することでn型特性やambipolar特性を示すことを初めて明らかにした。
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