研究概要 |
平成21年度において,本基盤研究(B)の最終年度として,白金電極におけるジメチルエーテル(DME)の電気化学的酸化反応の反応機構に関する研究成果の総仕上げを重点的に行ってきた.これまでに種々の白金単結晶低指数面及び高指数面電極表面において,DMEの電気化学的酸化活性について調べた結果,電極の表面構造に大きく依存することが分かった.その中で,Pt(111)電極に関する研究成果を速報とフールペーパーを一報ずつ投稿した. 今年度において,Pt(100)とPt(110)及び(100)のテラスをもつ白金単結晶面電極におけるDMEの電気化学的酸化反応の電極触媒活性について解析を進めると同時に,その場赤外反射分光法によりDME酸化反応の触媒活性についても詳しく検討した.特に低電位側におけるDME酸化反応の最初ステップとして,(CH_3OCH_2)_<ad>と(CO)_<ad>といった中間体を確認した.これらの結果を詳しく検討し,J.Electroanal.Chem.にフールペーパーとして投稿し,受理・掲載された.また,時間分解赤外分光法により,DMEの電気化学的酸化過程の中間体の時間変化について,白金多結晶電極をもってその場追跡した.DME酸化反応の速度論の角度から,その反応機構の解析を試みた.電気化学的と赤外分光測定結果に基づき,各中間体の速度論的な挙動について詳しく解析し,DME電気化学酸化の速度論と反応機構について初めて定量的に議論した.その結果をJ.Electrochem.Soc.にフールペーパーとして投稿し,受理・掲載された.電気化学走査型プローブ顕微鏡の測定を継続し,電極表面構造と反応性の関係の解明も進めている.また,電極触媒活性を上げるために,金属ナノ粒子や溶液pHの検討も進めている. 三年間の基盤研究を通じて,これまでに国際学術誌に論文を5報発表しており,DME電気化学酸化反応の研究について大きなインパクトを与え,当初の研究目的にほぼ達成されているものと考える.今後,国際学会発表を含め,これらの研究成果を燃料電池の触媒開発に応用できるように努力していきたい.
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