研究概要 |
本年度はナノ細孔性2D錯体[Cu(bpy)_2(OTf)_2](bpy=4,4'-ビピリジン、OTf=CF_3SO_3^-)に関連する次元構造が異なる{[Co(bpy)_2(CH_3CN)_2(H_2O)_2]・2(OTf)}(0D錯体)や{[Co(bpy)(OTf)_2(H_2O)_2]・bpy}(1D錯体)の間での固相内結晶変化について、X線回折その場測定により検討した。その結果、0D錯体は大気中のような水蒸気存在下でCH_3CN分子のみを結晶内から放出し、1D錯体になることを明らかにした。さらにその変化を速度論的に解析し、1次速度反応定数を求めた。この変化において最初に0D錯体の崩壊が起こり、その後固相内で1D錯体が生成するが、その際ゲストとして存在したOTfイオンがCoに配位すると同時に、bpy1分子がCoから外れゲスト分子になるというダイナミックな分子の移動が起きていることを明らかにした。さらに1D錯体を真空下加熱することで水分子を放出させると、ゲスト分子であったbpyがCoに配位し、[Cu(bpy)_2(OTf)_2]と同等の2D錯体に変化することがわかった。この2D錯体は[Cu(bpy)_2(OTf)_2]の窒素吸着等温線で見られる2段階吸着挙動を示した。すなわちミクロ孔フィリングとゲート現象に基づく窒素吸着である。 このほかに[Cu(bpy)_2(BF_4)_2]のBF_4^-をCF_3BF_3^-にしたものやNi系の2D錯体の構造と気体吸着性を検討し、これら錯体が2次元格子を基本として積層した2次元配位高分子であり、共通して窒素吸着においてゲート現象を示すことや、この現象が錯体の構造柔軟性に起因するものであることを明らかにした。このように一群の構造柔軟性2次元配位高分子錯体の合成とゲート現象について総括した。 また、[Cu(bpy)_2(BF_4)_2]粉末を用いてカラム実験を行い、CO_2吸着分離への応用において必要な基礎データを得、空気やメタンからの選択的分離作用について検討した。ヘリウムや窒素との分離はほとんど100%に近い分離機能を示した。メタンとの混合系では、メタンにより二酸化炭素分離作用の低下が見られたが、メタンの吸着はほとんどないと見積もられ、高い選択性が示された。
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