酸化チタン、酸化亜鉛をナノ多孔質シリカで、酸化鉄を酸化チタンで被覆したハイブリッド粒子の調製を中心に研究を行った。 光触媒として有用な酸化チタンの表面にナノ多孔質シリカを析出させる方法を確立し、実験条件の詳細な検討により、析出層の厚さを数nmから数十nmで制御することを可能とした。その構造は透過型電子顕微鏡観察、窒素吸着等温線の解析から確認した。十分に被覆をした材料は光触媒反応において基質選択制を示し、また触媒活性を抑制できる例もあった。その強い酸化力により光触媒として期待されている酸化チタンは逆に他の材料との親和性に課題があり、例えば分散のために使われる樹脂を劣化するというような課題があった。この点今回調製したシリカ被覆酸化チタンは魅力的な材料といえる。フェノール類の選択的分解、メチレンブルー(色素)の分解に関する予備的な成果を公表した。 同様な効果を期待した酸化亜鉛についてもナノ多孔質シリカによる被覆が実現できた。光触媒活性、発光特性の評価は今後の課題として興味深いが、酸化チタンとは異なった方向として、酸によって酸化亜鉛を溶かしだし、中空粒子を作ることに成功した。酸化チタンはその粒子形態を様々に設計することが可能であり、様々な形状のナノ多孔質シリカ中空粒子が合成できることを示すものである。 酸化鉄を酸化チタンで被覆した粒子は磁性を持った白色粒子を一つの目標に合成を行った。酸化鉄の色は酸化チタンにより効果的に遮蔽され、完全に酸化鉄の色を遮蔽した材料にたどり着く道筋がついた。厚さのより精密な設計、機能評価など今後の展開に大きな期待が持てる。
|