研究概要 |
本研究では,分子ゲルネットワークをテンプレートとしたナノメッシュ構造体の作製およびその機能化に関する研究を行ってきた。最終年度の本年は,ネットワーク構造の精密評価を行うとともに,分子ゲルの機能化による新しい材料創出への可能性を検討した。具体的には,分子ゲル中に重合性モノマーを溶解させ,これを重合させることでテンプレートポリマー体の作製を試みた。また,アゾベンゼン,チオフェン,ポルフィリンなどの光機能性部位を直接導入することで分子ゲルの機能化およびホストーゲストを利用した機能誘起について検討を行った。 1. 熱分析,Si NMR,円偏光スペクトル,電子顕微鏡観察により分子ゲルの配向構造およびその安定性に関する詳細な評価を行った。 2. チューブ状会合体を形成する分子ゲル内に重合性モノマーを溶解させ,その後光重合によりポリマー化した。洗浄による分子ゲルの除去を繰り返した結果,ナノサイズ(30-40nm)のチューブ状ポリマーを得ることに成功した。 3. ポルフィリン,チオフェンなどの光機能性を有する部位を直接導入した分子を新たに合成した。多くの分子は分子ゲルを形成し,配向構造に基づく吸収スペクトル,蛍光スペクトルの長波長シフトあるいは短波長シフトが観察された。同様な吸収波長のシフトは,ホストーゲストを利用した場合のゲスト分子のスペクトルにも観察されることを確認した。ポルフィリン系の分子ゲルでは,ゲスト分子に対する著しいスペクトル変化が見られたことから,分子センサーとして利用できる可能性が示唆された。
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