研究概要 |
Si(110)面はSi(100)面に比べ正孔移動度が約2倍高く、また、高度集積化と低消費電力化が達成可能なマルチゲートトランジスタの主要な活性面となることから、次世代CMOSテクノロジーで重要な役割を果たすSi面方位と目されている。本研究はこのSi(110)面に関し、従来不明だったSi(110)酸化表面素過程を解明することにより、次世代CMOSプロセス技術を表面科学的に裏付ける事を目的として行われた. 本年度は, 平成19年度に得られたSi(110)表面酸化機構に関する知見を更に精密化した. すなわち, Si(110)清浄表面において, 16×2再配列表面と無秩序に配列した表面を再現性良く実現する技術を確立し, それぞれにおいてO 1Sスペクトルの時間発展および飽和酸化膜のSi 2pスペクトルを放射光を用いてリアルタイム測定することにより, 清浄表面構造のオーダリングが酸化反応を促進する働きを持つことを初めて明らかにした. 次に, si(110)初期酸化では1個のsi原子に3個の酸素原子が結合したsi^<3+>構造が多数形成されることを明らかにし, これがSi(110)面の結晶構造を反映した結果であるとする酸化モデルを提案した. このモデルは, 第1層Si原子間のSi-Si結合(A-bond)よりも, 第1-2層Si原子間のSi-Si結合(B-bond)の方が酸化による歪みを緩和しやすく, 酸素が結合しやすいだろうという推察に基づいている. 最後に, 上記の酸化モデルの妥当性を検証すべく, Si(110)面熱酸化時における表面ストレスの時間発展とその異方性を基板曲率からリアルタイムで評価し, その結果, 上記の推察が正しい事を確認することができた. これらの知見はSi(110)酸化プロセスの構築に大きく資するものと期待される.
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