研究課題/領域番号 |
19360016
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
本橋 健次 東京農工大学, 大学院・共生科学技術研究院, 助教 (50251583)
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研究分担者 |
金井 保之 独立行政法人理化学研究所, 山崎原子物理研究室, 先任研究員 (00177487)
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キーワード | 多価イオン / 表面分析 / 二次イオン質量分析 / 電子捕獲散乱 / 原子層選別 / 同時計測 / 面極性 / 水素原子 |
研究概要 |
多価イオンの高い反応性、高い選択制、ソフトな反応、という三つの特徴を活かした新しい表面分析法の実現を目標とし、装置開発を進めた。平成19年度は、散乱原子及び散乱イオンとの同時計測による二次イオン質量分析法の開発を行った。これは表面に対し浅い角度で入射した多価イオンが、表面で固体の電子を捕獲した後に後方散乱する過程を選択的に観測することにより、原子層を選別した表面化学分析を行う方法である。 このうち、散乱原子と二次イオンとの同時計測では、表面対して2度以下という極浅入射により運動量スパッタリングを抑制した結果、最表面原子層を選別すること(面極性分析)に成功した。この方法では、従来法(CAICISS法)に比べ照射イオン量を二桁以上低減できる上、試料の角度分布測定やシミュレーションとの比較解析を必要としないため、低損傷な「その場測定」が可能である。面極性分析の多くは破壊型の分析法であるが、この方法は高感度非破壊型その場分析であり、応用上の意義は極めて大きい。 一方、散乱イオンと二次イオンとの同時計測では、散乱イオンの速度測定と二次イオンの質量分析を両立した。この方法は、入射イオンが表面から何層目の原子で散乱されたかによって、散乱イオンの速度が異なることを利用し、表面第1層と第2層を区別することができる。現在までに、不純物水素原子の混入原子層を反映したスペクトルを得ることに成功した。水素原子の固体表面への混入はほぼ不可避であるにもかかわらず、これを高感度に検出することが難しかった。この方法では、検出感度は入射多価イオンの価数の3〜5乗に比例して増大するため、高電離多価イオンを用いれば、混入水素原子密度の高感度測定が期待できる。不純物水素原子が物性に与える影響は大きく、これを原子層選別しながら定量的に分析できれば、応用上極めて有用な表面分析手法になると考えられる。
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