研究概要 |
1.アトムトラッキング技術とフィードフォーワード技術を組み合わせることで、室温における原子間力顕微鏡(AFM)を用いたフォーススペクトロスコピーの熱ドリフトによる測定の限界を改善した。具体的には、これまで(アトムトラッキングのみ)は熱ドリフト速度が2Å/分程度でなければ、再現性のあるフォーススペクトロスコピー測定が困難であったが、フィードフォワード技術を導入することで10Å/分程度の大きい熱ドリフト速度でも可能になった。 2.フォーススペクトロスコピーを2次元に拡張した測定方法(フォースマッピング法)を開発した。その結果、相互作用力の2次元分布を視覚的にとらえることが可能となり、(Pb,Sn)/Si(111)-(√3x√3)表面の3元素を同定できることを示した。 3.カンチレバーを第2共振周波数で振動させフォーススペクトロスコピーを行えることを示した。さらに、測定時のカンチレバー振動振幅によらず、探針先端に働く短距離力が一定であることを示した。小振幅化を行うことで、単原子間相互作用力の算出に不要な長距離力を取り除くことができることを実験的に示した。 4.Si(111)-(7x7)表面上で周波数シフトマッピングを行うことによって探針先端の異方性を評価する手法を開発した。Siアドアトム上でのフォースカーブの最大引力値を与える距離よりも探針を試料に近づけると、表面の対称性を破るマッピングが得られ探針先端の異方性を評価できることがわかった。この探針先端の異方性はフォーススペクトロスコピーやフォースマッピングのデータを考察する際に考慮する必要がある。 5.上記技術を、フォーススペクトロスコピーやフォースマッピングだけでなく、室温における原子操作に利用できることを実証した。
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