研究課題
有機合成的手法により、固体表面を不動態化(化学的に不活性で、実用的に安定に扱える状態にすること)させる有機単分子層の作製技術を進展させ、半導体表面及び金属表面上の有機単分子層の作成法と観測法を開発することを目標として研究を展開した。昨年度までは、試料作製装置や観測装置の組立て・新規立上げ、要素技術の開発等を行い、一応の完成をみた。そして今年度までに以下の成果をあげることができた。(1)ケイ素表面の単分子組織層の作製:ケイ素ウエハ表面上では、既に数々の種類の有機単分子層が作製できたが、最高安定性の不動態化表面を目指して、吸着種同士のクロスリンキング、即ち組織化された吸着層を作製し、振動スペクトルで構造を確認した。(2)ケイ素表面の有機単分子層疎水性相互作用のメカニズムの研究:軌道放射X線光源を用いたX線吸収分光法により、ケイ素終端メチル基が水分子より異常強度の電子的作用を受け、これが疎水性相互作用のひとつの特質であることを確認した。(3)金属アルミニウム表面の有機単分子層による不動態化の研究:今まで殆ど研究されてこなかったアルミニウム表面上の新しい吸着種を各種探索し、ついにチオール系吸着種をクロスリンキングさせることで酸化防止能のある単分子膜の作製に成功した。(4)不動態化ケイ素ウエハを基板として応用して、生体物質として重要なリン脂質分子の膜内電解反応を赤外吸収振動スペクトルで調べた。その結果、不動態化ケイ素ウエハ基板上に展開されたリン脂質膜は生体中と同様に流動性を維持するだけでなく、細胞膜電位程度の電圧印加によって相転移ともいうべき構造変化を行うことが発見された。
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e-Journal of Surface Science and Nano-Technology 7
ページ: 557-562