光波長の数十倍の広いストライプ幅をもつブロードエリア半導体レーザにおいては、活性層方向の発振領域が定まらず、光の自己収束効果とキャリアの空間ホールバーニングにより、時間的に十ps程度で数ミクロンの空間大きさを持つフィラメントと呼ばれる構造が発生し、これが時間と空間を不規則に移動する。これによりレーザビームの質が著しく劣化するため、ブロードエリア半導体レーザの応用において障害となっている。この現象は、レーザの持つ非線形生によるカオスであるが、これまで研究がほとんどなされていなかった。本年度の研究においては、光注入、空間フィルタリングを行った戻り光についての理論的解析を行い、フィラメントの抑制に効果のある条件について詳細な検討を行った。たとえば、レーザ発振強度と等倍くらいの光注入により不規則フィラメントを周期的な発振モードに強制することができ、このことにより時間平均におけるトップハット性が著しく改善できた。さらに、このことに関する基礎的な実験を行った。また、量子ドットを活性層に埋め込んだときの解析を可能にするために、まずは狭ストライプを仮定した半導体レーザについてのモデルを構築し、量子ドットレーザにおける解析を可能にした。次年度以降では、これをブロードエリア半導体レーザに応用した展開を試みる。
|