研究概要 |
生きたままの生体組織・細胞を構成する分子ならびにその機能を観測する"分子イメージング"技術は,ポストゲノム研究において必要不可欠な研究ツールとなる.CARS(コヒーレントアンチストークスラマン散乱)顕微鏡は,全ての分子が持つ分子振動を観測することにより,無染色に分子種ならび分子構造情報を得ることができ,また非線形光学効果による回折限界を超えた空間分解能と誘導放出過程による高い感度を備えた観測手段である.本研究では,従来のCARS顕微鏡を発展させ,膜タンパク脂質の選択的観測を可能にするものである. 本年度は,本研究に用いるレーザーシステムの開発を行った.市販のレーザーシステムを改造して,高精度に同期・高速波長走査が可能なシステムを構築し,これをCARS顕微鏡に適用して実時間観測を可能なものにした.2台のレーザー光の同期・波長走査それぞれをDSP(Digital Signal Processor)を用いて,高速・安定に制御するシステムを構築した.同期のずれは5kHzの帯域で観測して300fs程度,波長走査は約300ms(その間に,2台のレーザーの同期,パルス時間幅の最適化)で完了可能なものとなった.開発したレーザーシステムを用いて,CARS信号のリアルタイム観測を可能にした.ポリスチレンビーズがブラウン運動する様子や,リポソームの3次元イメージを高速に観測することに成功した.
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