研究概要 |
本研究では, 表面プラズモン共鳴による局所電場増強効果を用いた新しいテラヘルツ(THz)バイオセンサーの研究と応用展開を主目的としており, 今年度はSiプリズム導波路上に表面プラズモン共振器を密着させたタイプのバイオセンサーの製作に着手するとともに, 高出力THz波光源に対する検討を進めた. まず, 製作プロセスの高速性・再利用性とTHz領域での優れた複素誘電特性の双方を考慮して, 有機高分子材料を基盤構造として用いる新しいプロセス技術を検討した. そこでは, 周期がmm〜サブmmに至る様々な円筒形表面プラズモン共振器(Bull'sパターン)の試作を行い, 永久レジストであるSU-8を用いたフォトリソグラフィ条件の最適化を行った. その結果, THz領域の動作に対応する線幅300〜150μmにおいて, 同心円状のパターンが十分な精度で製作できる条件を見出した. これにより, 従来の集束イオンビーム(FIB)を用いた手法に比べて遥かに簡便・高速に実験的検討が進められることが明らかになり, さらにこの成果に基づき, 昨年度に構築したFDTD計算環境を用いて本リソグラフィ技術に則した現実的なシミュレーションを進めた. また, 光アドレス型半導体化学センサにおいて, ディスプレイモジュール上の光点を光源として使用する測定系を新たに考案して原理実証実験を行い, 上述のリソグラフィ技術との組み合わせによる携帯型計測系の実現に向けた検討を進めた. さらに, 高出力テラヘルツ波発生を行うため, 励起光源であるKTiOPO_4(KTP)光パラメトリック発振器の光共振器の最適化を進め, 従来の10倍の出力を得るとともに, 波長可変領域全てにおいて出力変動の少ない優れた発振特性を得ることに成功し, PCによる発生波長の自動制御も実現した.
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