研究概要 |
本研究課題では,表面プラズモン共鳴による局所電場増強効果を用いて,生体物質中のテラヘルツ(THz)帯振動を飛躍的な強度で励起する新規THzバイオセンサーを世界に先駆けて研究開発し,計測システムへの有用性および応用展開の可能性を明らかにすること研究目的としており,最終年度である今年度は以下の成果を得た.まず高精度な表面プラズモン共振器の微細周期構造を作製するため,CAD設計および電子ビームリソグラフィーにより周期幅・周期数の異なるCrマスクを作製し,これを用いた有機材料SU-8の紫外露光プロセスと金薄膜蒸着により,複数のTHz帯プラズモン共振器をSi基板上に同時に作製することに成功した.その詳細な顕微鏡観察により,高品質な微細構造の実現を確認し,新規開発した高速簡便かつ安価なプロセス技術の有用性を実証した.次に波長可変コヒーレントTHz波光源の検討として,有機DAST結晶を用いた差周波発生による広帯域THz波光源の最適化を行った.未知のDAST結晶の広帯域屈折分散特性を実験データおよび振動子モデル計算により決定し,最適励起2波長の波長同調法を初めて確立した.これにより,従来にない高効率・広帯域なTHz波発生が可能となり,1桁に及ぶTHz波の高出力化に成功するとともに,THz波イメージングシステムの構築へと発展させた.さらに,システムのバイオ応用展開を図るため,半導体化学センサを用いた細胞アッセイシステムを検討した.そこでは,生細胞のその場観察に必要となる細胞培養環境を維持と雰囲気制御機器からの電気的な雑音抑制を行うため,蓄熱材と断熱材を用いた培養環境維持用測定ボックスと組み込み型の測定装置を独自に開発し,ポータビリティと長時間保温とを同時に達成する実用性の高い生体測定システムを実現した.
|