多自由度階層系の多くは、スケール不変なフラクタル構造を形成することが知られており、基礎科学的ならびに応用上も極めて興味深い系である。本年度に行った研究は、平衡系臨界点近傍におけるフラクタル性の揺らぎの解明と、複雑ネットワークにおける臨界性とフラクタル性の関係について、前年度の成果をもとにさらに発展させた。複雑ネットワークにおける臨界性とフラクタル性の関係について、フラクタル性の揺らぎがユニバーサリティ・クラスに関係なく極めて普遍的な振る舞いを示す事が明らになった。また、多自由度フラクタル系に対する大規模シミュレーションや大規模数値解析を行い、前年度の成果をさらに発展させた。物理系ばかりでなく材料科学にも共通するフラクタル構造形成メカニズムとガラス形成過程の関連についての研究を行った。さらに、短いスケール長ではフラクタル構造を取り、それより長いスケールではスモール・ワールド性を有することを実在の複雑ネットワーク系で実証した。特に、本年度は前年度に続き、フラクタル次元の揺らぎに対して大規模数値計算により調べ発展させた。非フラクタル構造の発現のため、そのような普遍性は厳密には存在しないことが確かめた。また、複雑ネットワークのフラクタル性に関する研究でも多くの知見が得られた。まず、パーコレーション転移点直上にあるネットワークは、ネットワーク距離という非ユークリッド的な距離の概念の下でフラクタル構造を有することが明らかになった。
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