研究概要 |
本研究は,SCCにおける微小き裂発生から大き裂形成にいたる各階層の挙動を解明し,実機における応力腐食割れ(SCC)挙動をモンテカルロ・コンピュータ・シミュレーションにより再現し,寿命評価を行うというものである.平成20年度は,以下の3項目について研究を進めた. 1. SUS304鋼の加速環境下でのSCC試験と微小き裂の発生条件と進展特性 平成19年度に導入した定荷重SCC試験装置に,断面積の異なる試験領域を有する多段応力引張試験片を用いて,鋭敏化処理したSUS304鋼の沸騰水型原子炉(BWR)の加速環境下でのSCC試験を行った.経過時間,応力レベルに対応したSCCき裂数,き裂長さになっていることを確認した.種々の経過時間で取り出した試験片のき裂長さの分布の変化より発生条件と進展特性を決定できる可能性を明らかにした. 2. 微小き裂の合体条件 SCCにより微小き裂が発生し,合体が観察される試験片について,大気中静的引張試験を行い,その過程でのき裂の発生・合体の観察を試みた.き裂発生・合体が観察されたが,試験片本数が不十分であり,微小き裂の合体条件の確立の可能性を明らかにした. 3. シミュレーションの検証とシミュレーションの大規模化に対する対策 平成19年度までに開発されたシミュレーションプログラムを用いて,鋭敏化処理されたSUS304のSCC実験に対応する解析を行い,実験結果とシミュレーション結果を比較することにより,問題点の抽出と有効性の検証を行った.さらに,広い解析領域(数百mm×数百mm)でのシミュレーションを可能とし,計算効率が上がるように,マルチスケール・シミュレーション解析の手法を考案した.
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