研究概要 |
本研究では,骨再生用の3次元多孔構造スカフォールドに最適なHAp/生分解性脂複合材料を開発するとともに,3次元多孔構造の直接造形法を開発することを目的としている.本年度の成果は次のように要約される. 1)生分解性樹脂として,医用グレードのポリ乳酸(PLLA)を選択した.分子量は約20万とした. 2)HAp粒子については,牛骨由来のものを選択した.粒子の直径は約0.1μm,アスペクト比はほぼ1で,数十μm程度の凝集体を形成する傾向にあった. 3)HApとPLLAの界面接着は通常では極めて弱いことが報告されているため,多糖類のペクチンおよびキトサンによる表面修飾を検討した. 4)HAp/PLLA複合材料の製造に関しては,再沈殿法用いた.材料を氷水等に入れて急冷することにより,PLLAの結晶化度を10%以下に制御した.厚さ約05mmのフィルム上の材料を製造した.HApの体積含有率に関しては,9%および20%とした. 5)力学特性の評価に関して,均一な厚さの資料を得ることが可能な面積が小さかったため,曲げ試験により弾性率,強度を評価した.弾性率に関してはHApの含有率増加に比例して増加したが,理論値よりは小さかった.強度に関しては表面修飾の影響が非常に大きく,未修飾のHApを用いた場合含有率20%で強度が母材と比べ約20%低下するとともに破断ひずみが著しく低下した.これに対して,表面修飾した材料では母材の強度を維持するとともに,破断伸びも低下しなかった.このように,表面修飾によって強度特性が著しく改善された.
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