研究概要 |
ナノ薄膜の弾性定数を正確に計測することは学術的・実用的な意義が大きく,これまでも世界中で様々な計測方法が提案されてきた.我々は極短パルス光計測技術を駆使して,薄膜内に超音波共鳴を引き起こし,10nm以下のナノ薄膜の弾性定数を正確に計測する手法を開発し,標準化することを目標とする.平成19年度は,新しく光学系を構築し,Co薄膜,Cu薄膜,ダイヤモンド薄膜の弾性定数を計測した.チタン・サファイアパルスレーザーからの出力パルス光を音響光学素子によって変調した後,試料表面に集光して弾性波を励起する.また,分岐したプローブパルス光を非線形光学結晶に通し,弾性波の検出に用いた.ポンプ光の光路長を変化することにより,ポンプ光が入射してからプローブ光が試料表面に照射されるまでの時間を変化させる.これにより,試料表面のひずみの時間変化をとらえることができ,ポンプ光によって励起された力学的な共振(フォノン共鳴)をモニタリングすることができる.得られた波形をFFT処理すれば共鳴周波数を決定し,X線回折計測より得た膜厚から弾性定数を決定する.それぞれ,微視構造と強い相関が得られ,弾性定数の精密計測により,ナノ薄膜の非破壊検査が可能であることを十分に示唆する結果である.さらに,Pt薄膜に対して低温域において弾性定数の測定が可能なクライオスタットの開発を行った.液体窒素温度であるが,良好な共振信号が得られ,今後の計測に期待できる.
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