研究概要 |
本研究では,高温プレス成形を用いてガラス製超薄型フレネルレンズを製作することを目的としている.平成21年度では,ガラス・離型膜・金型間の界面拡散および融着現象の究明および金型の長寿命化のための実験条件の検討を行った.具体的な研究内容および研究成果は次に示す通りである. (1)界面における高温拡散現象について:X線光電子分光(XPS)分析により金型表層のP濃度,結合状態,結晶成長の分析を行い,界面拡散の有無およびその形態を調べた.その結果,高温・高圧状態におけるガラス/離型膜/Ni-P/基材の界面の元素拡散が存在することを明らかにし,界面元素の拡散によって局部的に金型の強度低下が生じることが分かった. (2)ガラス融着現象の解明について:まず,金型の劣化に伴って成形条件によってガラスの金型への融着現象を確認した.そして数種類のガラスと離型膜との界面物理・化学作用を分析し,融着部界面での元素分析を行い,界面応力状態などから融着の原因を分析した.さらに,ガラス融着防止の対策としてレアメタル系複合多層離型膜の効果を検証し,有効性を確認した. (3)金型の長寿命化および耐久試験について:以上の界面拡散および融着現象の解明によって得られた知見をもとに,金型基材,Ni-Pの成膜条件,および離型膜の材料と成膜条件を改善し,金型の長寿命化実験を試みた.耐久テストを行うことで金型寿命を評価し,金型製造およびガラス成形プロセスの総合的な向上を達成することができた. 以上の成果は,今後のガラス製超薄型フレネルレンズの高温プレス成形機構の究明や,成形プロセスの最適化などに有用な情報提供できると考えられる。
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