研究概要 |
本研究の目的は,酸化膜やその他の反応膜といった境界膜の存在を考慮した,マイクロメータスケールの表面粗さ突起の弾塑性接触理論に基づいた摩擦理論を構築し,その理論に必要な表面近傍のナノからマイクロメータスケールの材料強度を測定する技術を確立することである. 初年度ではまず,研究代表者が本研究の出発点になる摩擦理論において,その理論における粗さ面の統計的接触理論における表面粗さの3つのパラメーター(粗さ突起頂点高さの標準偏差σsum,単位面積当たりの粗さ突起密度Dsumおよび粗さ突起頂点の平均曲率半径Rsum)と摩擦係数との関係を明らかにすることを試みた.粗さの3つのパラメーターは独立ではなく,それらを独立に制御した表面を作成することはできないので,その従属関係を考慮して,摩擦係数に及ぼす3つのパラメーター影響を示し,粗さの突起密度Dsumの関係で整理できることを明らかにした.また,表面近傍のナノからマイクロメータスケールの材料強度を測定する技術を確立するための予備実験として,プローブ顕微鏡(AFM)においてその接触子先端の曲率半径が粗さ突起半径のオーダのものを用い,その接触子に適合する剛性のカンティレバーを製作し,シリコンウェハーの上に数種類厚さの金の薄膜を蒸着した試験片について,摩擦係数を測定し,またナノインデンターにより有効硬さを測定することによって,摩擦の基本物性である薄膜のせん断強度測定の試みた.
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