研究概要 |
本研究の目的は,酸化膜やその他の反応膜といった境界膜の存在を考慮した,マイクロメータスケールの表面粗さ突起の弾塑性接触理論に基づいた摩擦理論を構築し,その理論に必要な表面近傍のナノからマイクロメータスケールの材料強度を測定する技術を確立することである. 初年度ではまず,本研究の出発点になる代表者の摩擦理論に用いられている表面粗さの3つのパラメーター(粗さ突起頂点高さの標準偏差o sum,単位面積当たりの粗さ突起密度Dsumおよび粗さ突起頂点の平均曲率半径Rsum)が独立ではないので,摩擦係数と粗さの関係をより明確にすることを試みたが,平成20年度では.その従属関係を相関長というパラメーターで表すことにより,摩擦係数は粗さの関係は突起密度Dsumあるいは相関長だけで決まることを明らかにした.また,表面近傍のナノからマイクロメータスケールの材料強度を測定する技術を確立するために,初年度ではシリコンウェハーの上に数種類厚さの金の薄膜を蒸着した試験片について予備実験を行ったが,今年度は,エンジン油に酸化防止と摩耗防止のために用いられているZnDTPの添加剤を用いて,ボール・オン・ディスク摩擦試験機によりしゅう動させて数十ナノメートルの摩擦反応被膜を形成させ,その薄膜のせん断強度測定を行い,プライマリZnDTPの反応膜の方がセカンダリの反応膜よりせん断強度が高いことを明らかにした.
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