研究概要 |
本研究は, 大気圧非平衡プラズマ流による生体反応機能性を発現するラジカルの生成輸送機構を解明し, 次世代医療基盤技術の創成とその飛躍的な発展を目的とする. 平成20年度には, 平成19年度に解明した化学的活性種の生成輸送過程において重要な滅菌因子の1つと考えられるOHラジカルに着目し, 研究実施計画に沿って, OHラジカルの生体に与える影響の検証とOHラジカルの生成過程の数値モデルの構築および解析を行った. 0ラジカルや窒素酸化物の生体への影響を排除するために, 大気圧水蒸気100%中でプラズマによりOHラジカルを生成する手法を考案した. また, OHラジカルの生成量を発光分析と最終生成物である過酸化水素濃度の計測により定量化することに成功した. これにより, OHラジカル生成量とGeobacillus Stearothermophilus(熱・紫外線耐性菌)の芽胞への滅菌効果と強い相関があることを示し, OHラジカルが重要な滅菌因子であることを明らかにした. また, 電子温度と重粒子温度が異なる熱非平衡性と電子・イオン・中性粒子の運動を考慮した3流体2温度モデルを採用し, 電子エネルギーの非マックスウェル分布の考慮や, 23種の化学種と102種類の化学反応式を考慮した, 放電・反応プロセス解析モデルを構築した. これより, OHラジカルの生成が放電時の電子密度分布と概ね一致していることを示し電子衝突による生成が支配的であることやOHラジカルが放電後に安定生成物であるH_2O_2に変化することを明らかにした. これらの成果により, 研究目的である生体機能性を有するラジカルの生成輸送機構を明らかにすると共に, 特に生体反応制御で重要なOHラジカルの生成輸送機構における重要な知見を得た.
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