直接数値計算による二重拡散成層乱流の構造解明のため、スペクトル法による直接数値シミュレーションを周期境界条件のもとで行い、特に、アクティブスカラーが2種(典型的には熱Pr=6と塩分Sc=600)ある場合を含めた解析を行った。その結果、成層がある程度強く、オズミドフスケールがコルモゴロフスケール(運動エネルギーが散逸するスケール)よりも小さければ、浮力による位置エネルギーが運動エネルギーに変換されてしまうことにより、アクティブスカラーの位置エネルギーも運動エネルギーと同じコルモゴロフスケール近傍で散逸することがわかった。また、塩水水槽実験においては、乱流格子を水平移動させて生成した乱れについて、水槽の中央付近での速度場、塩分濃度場(蛍光染料ウラニン)の時間発展を計測した。特に、LIF(レーザー誘起蛍光法)を用いたパッシブスカラー(蛍光染料)のvarianceのスペクトルの測定法の確立に重点を置き、運動エネルギースペクトルとのスペクトル形の比較を行うことに成功した。その結果、アクティブスカラーは、高シュミット数のパッシブスカラー(Sc=600)とは異なる散逸スケールを持つことを示唆する結果を得られた。これは、直接数値計算の結果を支持するものである。また、RDT理論においては、DNSの結果をもとにして、成層の強さがどの程度弱ければBatchelorの相似則が成立するか(RDT理論の成立条件)についての詳細な検討を行い、同時にDNSとの直接比較を行った。その結果、基本的にはフルード数Frが小さい場合に、RDT理論が定量的に妥当な結果を与えることを明らかにした。
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