研究概要 |
本研究課題初年度の平成19年度には,前年度に引き続き壁面乱流あるいは熱対流乱流として最も基本的な,温度差を有する水平平板間クエット系の実験装置を作製し,温度勾配の導入による壁乱流中の大規模構造の安定化に取り組んだ.本実験装置では,水平な加熱平板上で薄厚ポリエステル製のエンドレスベルトを一定速度で走行させることで,壁面による剪断と加熱による浮力の両作用を実験的に実現した.本装置の特性を調べるために予備実験を行い加熱面の温度の一様性を確認し,またPIVによる速度場計測によって平均速度分布,乱流強度分布が数値シミュレーションの結果と一致することを確認した.このことから,健全な実験装置が実現できたものと判断する.さらに,本装置を用いて,壁面加熱による乱流中の大規模構造安定化の可能性の実験的調査を開始した. 次に,有限差分法を用いた平板間クエット系のシミュレーションプログラムを作成し,これによる数値実験により,壁面近傍に局在した制御入力を用いて乱流中の周期サドル解を安定化できることを示し,その結果,流動抵抗低減あるいは伝熱促進がなされることを明らかにした.さらに,周期サドル解の線形安定性を解析することにより,サドル解(乱流状態)近傍に層流-乱流吸引域境界が存在することを明らかにした. また,低レイノルズ数正方形ダクト乱流の数値シミュレーションを行い,この種の乱流中の大規模構造である二次流れと,壁付近の秩序構造である縦渦構造とを関連づけられることを示した.さらに,ダクト壁を加熱することで二次流れの流動パターンを制御できることを明らかにした.
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