研究概要 |
本研究課題2年目の平成20年度には,前年度に引き続き壁面乱流あるいは熱対流乱流として最も基本的な,温度差を有する水平平板間クエット系の実験装置を作製し,温度勾配の導入による壁乱流中の大規模構造の安定化に取り組んだ.本実験装置では,水平な加熱平板上で薄厚ポリエステル製のエンドレスベルトを一定速度で走行させることで,壁面による剪断と加熱による浮力の両作用を実験的に実現した.前年度問題となった壁面の移動に伴う乱れを抑制するためモーターのインバータ制御の設定を変更し,PIVによる速度場計測によって平均速度分布,乱流強度分布,2点速度相関が数値シミュレーションの結果と一致することを確認した.このことから,健全な実験装置が実現できたものと判断する.さらに,本装置を用いて,壁面加熱による乱流中の大規模構造を制御できる可能性が示唆された. 次に,前年度に有限差分法を用いて開発した平板問クエット系のシミュレーションプログラムを用いて周期サドル解を求め,壁面近傍に局在したわずかの制御入力により乱流中のサドル解を安定化できることを示し,その結果,流動抵抗低減あるいは伝熱促進がなされることを明らかにした.また,温度差を有する低レイノルズ数の水平正方形ダクト乱流の数値シミュレーションを行い,浮力の影響により乱流二次流れが影響を受け,多様な流動パターンが現われることを明らかにした.さらに,二次流れのレイノルズ数依存性を明らかにし,二次流れを生成する流れ方向渦度は壁近傍の秩序構造と同程度の空間スケールを持ち,他方二次流れに対応する流れ関数は秩序構造より大きな空間スケールを有することが明らかとなった.
|