研究概要 |
本研究課題最終年度となる平成21年度には,前年度に引き続き壁面乱流あるいは熱対流乱流として最も基本的な,温度差を有する水平平板間クエット系の実験装置を作製し.温度勾配の導入による壁乱流中の大規模構造の安定化に取り組んだ.本実験装置では,水平な加熱平板上で薄厚ポリエステル製のエンドレスベルトを一定速度で走行させることで,壁面による勇断と加熱による浮力の両作用を実験的に実現した.今年度は冷却水流路を有するジュラルミン製上壁面を作成して温度管理を徹底し,実験装置を完成させた.PIV及びLDVによる速度場計測によって平均速度分布,乱流強度分布,2点速度相関が数値シミュレーションの結果と一致することを確認し,実験とシミュレーションによって,乱流中の大規模構造が乱れに及ぼす影響を明らかにした. 次に,温度差を有する低レイノルズ数の水平正方形ダクト乱流の数値シミュレーションを行い,浮力の影響による乱流二次流れや乱れのスケーリングの特性を明らかにし,さらに複合対流固有の流動パターンが現われるメカニズムを明らかにした.さらに,正方形ダクト流における非線形定常進行波解をニュートン法により求めることに成功した.この進行波解は.乱流二次流れに典型的な8つ渦パターンを再現し,かっ乱流二次流れの振幅と同程度の強さを有する.この解に基づき,乱流二次流れ及び大規模乱流構造の生成メカニズムを提案した.また,平面クエット流の静穏周期解の不安定多様体を計算する手法を考案し,得られた不安定多様体に基づき,クエット流における亜臨界乱流遷移に対して,注入する撹乱の性質に依存しない普遍的な遷移の理論的記述を得た.
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