研究概要 |
再生軟骨組織発達における輸送現象の可視化および定量化を行い, 得られた実験データを基礎として物理刺激応答のモデリングを行うことを, 本課題の目的としている. 本年度は(1)「拡散輸送と組織発達の評価」, (2)「組織内移流輸送現象可視化システム開発」を行った. 前年度作成した, 再生軟骨組織培養プロトコルを用いて, 組織発達により拡散輸送現象がどのように変化するかについて検討した. 担体アガロースには, 1%type VII, 4%type VII, 4%type IXの3種類を用い, 拡散種としては蛍光デキストラン(分子量3kD, 10kD, 70kD)を用いた. 特に10kDのものは電気的に中性のもの(10k)と負に帯電しているもの(10k-)とを用いた. 1%type VIIを担体アガロースに用いた結果より, Control(細胞を播種しない)試験片と再生委軟骨試験片との, 28日間までの培養においては, 細胞が試験片に存在することにより, 物質輸送が促進されることが, 全ての種類の拡散種において観察された. これは, 細胞代謝活動により拡散輸送が増大したためであると考える. また, 特に1%type VIIを担体アガロースに用いた場合には, 10kと10k-の拡散輸送実験結果には顕著な差異が観察され, 培養期間を増大させるにつれて, 10kの拡散輸送に比較して10k-の拡散輸送の増大が観察されなかった. これは, 細胞代謝の結果, 負の電荷を有するケラタン硫酸等の細胞外マトリックスを構成する高分子の産出の結果であると考える. 次に, 移流輸送現象を可視化するために, 高精度位置制御圧縮試験機を用いて再生軟骨組織の変形をそれに伴う輸送現象の観察を顕微鏡上で観察するための可視化システムを構築した. 輝度総量評価法を開発することにより, 拡散輸送現象と移流輸送現象とを区別して考察することが可能となった。
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